柏書房株式会社KASHIWA SHOBO

「日本に性教育はなかった」と言う前に ブームとバッシングのあいだで考える

今度こそ、あらゆる子どもに性教育を、性の多様性に関する教育を届けるために、私たちが知るべき「バッシング」の歴史!

定価
1,980円(本体 1,800円)
刊行
2023/07/24
ISBN
9784760155293
判型
四六判
ページ数
256

内容・目次

内容

今度こそ、あらゆる子どもに性教育を、
性の多様性に関する教育を届けるために!


【本書の内容】
2015年にはじまる「LGBTブーム」。そして2018年にはじまる「おうち性教育ブーム」。そうした流れの中で、性と性の多様性に関する教育の必要性が、改めて叫ばれている。


しかし歴史を見れば、権利保障が前に進もうとするとき、それを揺り戻そうとする動きも前後して起こってきた。そんなバッシングがまかり通ってしまったために、性教育の機会が、性的マイノリティの居場所が、奪われてしまったこともある。


そう、戦後の日本には、性教育をめぐって三度のバッシングがあった。そのとき、教員に限らない社会の人々は、何をして、何をしなかったのだろうか? 


気鋭の教育学者がその歴史をひもときながら、バッシングを目の前にしたとき、私たち一人ひとりにできること、すべきでないことを考える一冊。


【本書の見取図】
三度にわたるバッシングの歴史をひもとく!


◆80年代――萌芽期
「性教協」という団体で、性の多様性に関する教育がすでに練り上げられ、実践されていた。


◆90年代――スルーされたバッシング
「官製性教育元年」が興るも、旧統一協会が「新純潔教育」を掲げ、性教協に対する批判キャンペーンを展開。


◆00年代――燃え盛ったバッシング
「七生養護学校」の性教育実践に対し保守派が批判を展開。裁判で教師側が勝利するも、以後、性教育はハレモノ扱いに……。


◆10年代――失敗したバッシング
「足立区立中学」の性教育実践に対し保守派が批判を展開。結果的に、いまに続く「おうち性教育ブーム」につながる。


【著者略歴】
堀川修平〈ほりかわ・しゅうへい〉
1990年、北海道江別市生まれ。東京学芸大学大学院連合学校教育学研究科博士課程修了。博士(教育学)。専門は、日本の性教育実践と実践者の歴史・性的マイノリティ運動の歴史。埼玉大学、立教大学ほか非常勤講師。一般社団法人”人間と性”教育研究協議会幹事。主な論文として、「日本のセクシュアル・マイノリティ運動の変遷からみる運動の今日的課題―デモとしての『パレード』から祭りとしての『パレード』へ―」(日本女性学会『女性学』23号、2015年)、「”人間と性”教育研究協議会における性の多様性に関する実践史―教育者の同性愛観に着目して―」(同時代史学会『同時代史研究』11号、2018年)。著書に『気づく 立ちあがる 育てる――日本の性教育史におけるクィアペダゴジー』(エイデル研究所、2022年)。


目次

はじめに


第一章 性教育の原風景
きり拓かれた土地で生きる/生きた私
消極的な動機から
傷つきながら、他者を傷つける私
「仲よくみんな」の「みんな」は誰のことか
現状を追認する?
私にとっての性教育の原風景
三パターンの「性教育」観
「男子は、ドッジボールでもしてきなさい」


第二章 「性教育」とはどのような教育か?
「性」をどのように訳す?
「人間の性」を学ぶ性教育
生まれてから亡くなるまでの一生涯に関わる性教育
学校教育にとどまらない性教育
授業にとどまらない性教育
「道徳科で性教育をやりました」は本当か?
教育と性に対する「日本会議」の思惑
「〝友達〟と〝恋人〟と〝セックスフレンド〟の違いは何だと思いますか?」
『ガイダンス』の意義
「純潔教育」とは何か?
「科学的な性教育」を吟味した性教育へ


第三章 性教育バッシング、その実態
「知っている」とはどのような状況か?
振り子が揺れるように
九〇年代のジェンダー平等に関わる状況
性教育は学校でどのように受けとめられた?
男女混合名簿と「くん」「さん」呼びの見直し
バッシング派の危機感
出し物(エンターテインメント)としてのバッシング
性道徳志向の性教育の推進者
突然の「視察」
「ここから裁判」の顚末
「創意工夫による性教育実践の開発」を阻害したバッシング
「生命(いのち)の安全教育」は性教育ではない
発達段階に応じた創意工夫を積極的に
必要なのは歴史として学ぶ機会の保障


第四章 バッシングの炎が燃え盛るとき、そうでないとき
性教育バッシングは、二〇〇〇年代から始まったのか?
矮小化されるバッシングの被害
誤認とためらいは、どこから?
「性の多様性」をとりまく教育状況
いま、生きることをやめようとする子どもたち
子どもの置かれている状況から性教育実践を始めた教師たち
二〇一八年のバッシング
「性教育バッシング」が「性教育ブーム」につながった?
「ブーム」に終わらせないために


第五章 「性の多様性」を教育の場でどう取り扱うか?
授業はどのようにつくられるのか?
〝人間と性〟教育研究協議会の誕生
「同性愛プロジェクト」の発足
「無自覚な差別性」に寄せられた批判
性的マイノリティ「を」教えるのではなく、かれら「から」自分を問い直す
四〇年の歩みのなかで
「トイレ探検で『さまざまな性』を学ぶ」――星野恵実践
「総合的な学習の時間」とは?
子どもの声を前提に
教えるその前に、教師がまず学ぶこと
橋本秀雄さんとの出会いから――川端多津子実践
性教育が子どもを苦しめる瞬間
「三つのあやまり」への気づき
「三つのあやまり」をふまえた実践
モデルの功罪
何のために性教育を実践するのか?
性の多様性を学校教育で取り扱うことも阻害していた性教育バッシング


第六章 トランスフォビアのなかで生き延びるために
ようやく変わりつつある学校
完璧な「通知」ではない、けれども
性の多様性に関する認識の向上、その反動としてのバッシング
トランスジェンダー排除
バッシングは、おとなの世界だけで起きているのではない
生き延びている、LGBT(かもしれない)ユースたち
LGBTへの誹謗中傷と子どもたち――鼎談
スタッフへの心的負担
アメリカからの輸入
積極的にスルーする
エンパワーメントが持つ意味


終章 ブームとバッシングのあいだで考える
大麻(おおあさ)にやってきたにじーず
バッシングに抗うための大前提
権利保障とバッシングの関係
性教育バッシングは、性の多様性バッシングでもある
バッシングが「可視化」の呼び水に?
ブームの成果
ブームと商業化
ブームと外部委託
振り子を止める


おわりに


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