柏書房株式会社KASHIWA SHOBO

あいつゲイだって アウティングはなぜ問題なのか?

一橋大学アウティング事件控訴審判決から1年。2022年4月から中小企業でも防止対策義務付け。改めて考えたいアウティング問題!

定価
1,980円(本体 1,800円)
刊行
2021/11/24
ISBN
9784760154272
判型
四六判
ページ数
232

内容・目次

内容

2021年11月は「一橋大学アウティング事件」の控訴審判決から1年にあたる。「パワハラ防止法」により、2022年4月からは中小企業でもアウティングの防止対策が義務付けされることになっている。


なぜアウティングは「不法行為」と判断されたのか? そもそもなぜ、性的指向や性自認といった個人情報の暴露が「命」の問題につながってしまったのか?


実は、一橋事件の前からこうした被害は起きていたし、現在も起きている。学校や職場などの身近な人間関係、不特定多数に瞬時に情報を発信できてしまうネット社会において、誰もが加害者にも被害者にもなり得るのだ。


校舎から飛び降りたのは、私だったのかもしれない――。勝手に伝えることが誰かの「命」を左右する瞬間を、痛みとともに、ひとりの当事者が描き出す。


一橋事件を一過性のものとせず、被害を防ぎ、これ以上「命」が失われないためにも、いま改めて考えたい「アウティング問題」の論点!


■「アウティング」とは?
本人の性のあり方を同意なく第三者に暴露すること。


■「一橋大学アウティング事件」とは?
「おれもうおまえがゲイであることを隠しておくのムリだ」。一橋大学大学院のロースクールに通うAがゲイであることを、同級生ZがクラスメイトのLINEグループに同意なく暴露。心身に変調をきたしたAは2015年8月、校舎から転落死した。翌16年、遺族が学生Zと大学に対し損害賠償を求めて提訴。20年11月の控訴審判決では、本人の性のあり方を同意なく勝手に暴露するアウティングが「不法行為」であることが示され、世間的にも「アウティング=危険な行為」という認識が広まるきっかけとなった。地方自治体だけでなく、国レベルでも大きな影響があった。


■目次
はじめに
第一章 一橋大学アウティング事件――経緯
第二章 アウティングとは何か
第三章 繰り返される被害
第四章 一橋大学アウティング事件――判決
第五章 アウティングの規制
第六章 広がる法制度
第七章 アウティングとプライバシー
第八章 アウティングの線引き
第九章 アウティングのこれから
終章 アウティング、パンデミック、インターネット
おわりに


■著者プロフィール
松岡宗嗣〈まつおか・そうし〉
1994年愛知県名古屋市生まれ。明治大学政治経済学部卒。政策や法制度を中心とした性的マイノリティに関する情報を発信する一般社団法人fair代表理事。ゲイであることをオープンにしながら、HuffPostや現代ビジネス、Yahoo!ニュース等で多様なジェンダー・セクシュアリティに関する記事を執筆。教育機関や企業、自治体等での研修・講演実績多数。2020年7月、LGBT法連合会・神谷悠一事務局長との共著『LGBTとハラスメント』(集英社新書)を出版。近著に『「テレビは見ない」というけれど--エンタメコンテンツをフェミニズム・ジェンダーから読む』(青弓社)、『子どもを育てられるなんて思わなかった--LGBTQと「伝統的な家族」のこれから』(山川出版社)。本作が初の単著となる。


▼著者の手書きPOP


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eigyo@kashiwashobo.co.jp(お手数ですが全て半角に置き換えください)


目次

はじめに

第一章 一橋大学アウティング事件――経緯

告白/LINEグループでのアウティング/転落/遺族には知らされなかった事実/求めたのは「謝罪」


第二章 アウティングとは何か

アウティングという行為/データでみる被害/性的指向と性自認/言葉自体が知られていない/アウティングはなぜ「問題」なのか


第三章 繰り返される被害

大阪の病院で起きたケース/地方の高校で起きたケース/「良かれと思って」の落とし穴/職場におけるアウティング/トランスジェンダーの直面する困難/人称代名詞/カミングアウトとは何か/身を守るためのゾーニング 


第四章 一橋大学アウティング事件――判決

学生とは和解、大学との裁判は敗訴/控訴審、尋問、母の陳述/判決/終結


第五章 アウティングの規制

事件後、社会の変化/「仕方がないこと」だと思っていた/自分は「何者」なのか/「問題」の所在/「カミングアウトの自由」という権利/カミングアウトを「させない」ことの禁止/条例が守ろうとしているもの


第六章 広がる法制度

広がる規制/パワハラ防止法の成立/アウティング法制の効果/豊島区の企業で起きたケース/アウティング法制の疑問/カバーしきれない「言葉」の問題/被害に対処する「仕組み」/現実を矮小化せずに、理想を語れるか


第七章 アウティングとプライバシー

プライバシーとは何か/要配慮個人情報/人格の発展、情報のコントロール


第八章 アウティングの線引き

アウティングをめぐる三つの線引き/(一)属性/「在日コリアン」の場合/インターセクショナリティの視点/「ハーフ」や「ミックス」の場合/「難民」に関する報道/言葉の汎用性/(二)場面/大津市でのアウティング被害/ゴシップ報道による被害/議員によるプライバシー侵害/(三)許容範囲/当事者間でのトラブル/同性間の性犯罪と、その報道/緊急時におけるアウティング/原則の確認と現実的な対応


第九章 アウティングのこれから

東京五輪で起きたアウティング/自由と尊厳、欧米のアプローチの違い/差別を禁止する法律もない日本/「だったら共有されたくない」という反応/カミングアウトされた側の不安/「噂」への対応/アウティングが起きてしまったら/「何もしない」ことの問題/性別は「機微な個人情報」か


終章 アウティング、パンデミック、インターネット

新型コロナウイルスとアウティング/韓国の「ゲイクラブ」で発生したクラスター/個人データとアウティング/受け継がれるピンクの三角形/社会は勝手に変わらない


おわりに