柏書房株式会社KASHIWA SHOBO

「芸術」をつくった男

ミケランジェロを「天才」に仕立てた本――ジョルジョ・ヴァザーリと『芸術家列伝』をめぐるノンフィクション。

定価
2,970円(本体 2,700円)
刊行
2018/08/03
ISBN
9784760150250
判型
四六判
ページ数
466

内容・目次

内容

ミケランジェロを「天才」に仕立てた本――美術史のバイブル『芸術家列伝』と、画家であり歴史家、そして創作者、ジョルジョ・ヴァザーリ。文字による肖像画は、世界の見方をいかに変えたか。


“美術”と呼ばれる新しい存在の観念は、この伝記の中で偉業を称えられた労働者たちの偉大な共同発明の一つなのだ。彼ら自身が美術の創造者として、職人を超えた者になったという考えにしても同様である。彼らは制作するだけでなく考える人になったのだ。(略)。ヴァザーリの話や考えの多くを知るために、『列伝』を読む必要はない──自分で気づいていなくても、彼の本を実際に読んでいてもいなくても、あなたの美術についての考え方はヴァザーリによるところが大きいのだから。(本文より)


【著者紹介】
イングリッド・ローランド Ingrid Rowland


ポモナ大学卒業、ブリンマー大学大学院修了。専門はイタリア美術史、建築史、西洋古典学。現在ノートルダム大学建築学部教授。2009年、Giordano Bruno, Philosopher/ Hereticで、優れたイタリア文化史の書籍に贈られるヘレン&ハワード・R・マッラーロ賞を受賞。その他にThe Culture of the High Renaissance: Ancients and Moderns in Sixteenth-Century Romeなどの著書がある。


ノア・チャーニー Noah Charney


アメリカ・コネチカット州生まれ。コルビー大学卒業後、コートールド美術研究所とケンブリッジ大学で美術史の修士号を取る。その後、スロベニアに移り、リュブリャナ大学で建築学の博士号を取得。2007年には美術犯罪についての小説『名画消失』(早川書房)を出版。その他にもAssociation for Research into Crimes against Artを設立するなど、幅広く活躍。


【訳者紹介】
北沢あかね(きたざわ・あかね)


早稲田大学文学部卒業。翻訳家。主な訳書に『天使の鐘』(柏書房)『偽りのレベッカ』『死者は眠らず』『インフォメーショニスト』『ドールマン』『殺人小説家』『ブルー・ブラッド』(以上、講談社)『トップ・プロデューサー ウォール街の殺人』(小学館)『夜明けが来るまで見られてる』(ヴィレッジブックス)などがある。


目次

序1 失われたダ・ヴィンチ  

2 ヴァザーリ作『列伝』の読み方


第一部

3 陶工から絵描きへ ヴァザーリの祖先と最初の教師たち

4 アレッツォからフィレンツェへ

5 略奪と疫病

6 美術家VS美術家 悪魔の大槌と道義の物語

7 戦争によるチャンス

8 メディチ家の中に戻る

9 劫掠後のローマ

10 フィレンツェの画家

11 殺人と贖罪


第二部

12 さすらいの美術家

13 フィレンツェ、ヴェネツィア、ローマ

14 ルネサンス人 ダ・ヴィンチ、ラファエロ、ミケランジェロ

15 象徴と変化する審美眼

16 ナポリへ

17 『列伝』の誕生

18 ルネサンスの読物

19 新しいウィトルウィウス


第三部

20 センプレ・イン・モート(絶えず動く)

21 フィレンツェにおける大改革

22 アカデミア・デル・ディゼーニョと『列伝』改訂版

23 地方を回って

24 第二の『列伝』

25 旅は続く

26 クーポラとサラ・レジアの間で

27 ロイヤル・ホール

28 『列伝』の遺産

29 大きく円を描いて「ジョットの円」に戻る

30 結び チェルカ・トローヴァ