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 特別寄稿
『 更年期の養生訓 』
第10回 その飲み物はあなたの体を冷やしている!
by 佐光紀子
2012年2月23日
ティータイムの甘味料を見直す

寒い日が続いていますが、いかがお過ごしでしょうか。その年の最低気温を記録するのは、1月半ば、大寒の頃です。ここを抜けるとだいぶよいとはいうものの、更年期に入ってからますます冷えがひどくなる一方の私は、外に出るのもおっくうになってしまうほど、この季節が苦手です。少しでも、暖かく、気持ちよく過ごすには、すでにご紹介してきているような、日々の食べ物や足湯などの工夫に加えて、日頃口にするお茶なども吟味したいものです。

例えば、コーヒーや紅茶に入れる砂糖は、薬膳では大きく3つに分かれます。白砂糖、黒砂糖、そして氷砂糖です。すでに何度かお話していますが、食べるものには、体を温める性質のあるものと、冷やす性質のもの、そして、冷やしもしなければ、温めることもないものの3つがあります。砂糖のうち、白砂糖は冷性といって、体を冷やすものに属します。一方、黒砂糖は体を温めます。残る氷砂糖は、冷やしもしなければ、温めることもありません。このことを知ってから、わが家では料理に使う砂糖を黒砂糖に切り替えました。冬場に紅茶やコーヒーを飲むときに入れるのも、もちろん、黒砂糖です。

冬場に冷たい飲み物を飲むことはそう多くはありませんが、たまに飲むときは、砂糖の入っていないものにしています。甘い飲み物には人工甘味料か砂糖が入っているわけですが、それが、黒砂糖である可能性は非常に低いからです。ただでさえ、冷たい飲み物をとると体は冷えるわけですから、その上、白砂糖がタップリ入っているのではダブルパンチです。そういう意味では、お菓子類も、使われている甘みの中心は白砂糖だろうと考えて、冬場は温まるものと一緒に食べるなど、ちょっと気をつけるようにしています。たとえば、甘いものがほしいときは、リンゴを黒砂糖やクルミと一緒に煮たものを食べるなど、自家製の黒砂糖入りのものをとるようにしたり、ドライフルーツを食べたりすることで、白砂糖の摂取を極力回避するようにしています。これなら、カロリーコントロールにも冷えにも効果的です。

友人とそんな話をしていたら、「果物にも砂糖は入っているでしょう? 果糖は体を冷やさないの?」と不思議そうでした。でも、この場合は果糖だけ食べるわけではなく、リンゴやドライフルーツとして食べるので、果物自体に体を冷やす性質がなければ問題はありません。食材は、成分ではなく、そのもののもつ性質が重視されます。ですから、なるべく加工食品を摂るよりは、食材をそのまま生かしたものを食べなさいといわれます。たとえばコーヒーなら、豆の方が、インスタントよりは、本来もつ性質がしっかり体に伝わるということです。

お茶の種類と冷え対策

冷える時は、とりあえず何か熱い物を飲めば体を温まりそうな気がしますが、必ずしもそうでもありません。例えば、緑茶は体を冷やします。夏場は冷たい飲み物より、緑茶の方が体の熱を冷ます効果は大きいともいいます。私のように冬場は冷えがひどい人は、緑茶を避けるのが賢明だということになります。また、胃腸の弱い人が朝飲むと、胃を冷やして機能が低下してしまいますから、朝食前の緑茶は良くないといわれます。これは、抹茶や煎茶、玉露についても同様です。

ウーロン茶、プーアール茶などの出す中国茶も、緑茶ほどではありませんが、体を冷やす傾向にあるものが目立ちます。

一方、体を温める効果の高い飲み物の代表は紅茶です。同じ茶葉なら、よく発酵させたお茶の方が緑茶などより、体を温める傾向は強くなります。紅茶に温めた牛乳を入れ、黒砂糖で飲むのは、気持ちも安定し、体も温まるので、冬の季節にはお勧めです。胃が疲れているときは、黒砂糖の代わりに蜂蜜を入れることで、胃の機能を高めたりお通じをよくする効果が期待できます。

冷えがひどくてつらいときは、ミルクティーにシナモンを加えると、体を温める効果がアップします。シナモンスティックで紅茶をかき混ぜ、ゆっくりシナモンのエキスを浸透させると良いのでしょうけれど、スティックがなければパウダーでもよいと思います。シナモンよりジンジャーの香りの方が好きならば、生姜をみじん切りにして乾燥させた乾姜を紅茶の茶葉に少量加え、お湯を注いでジンジャーティーにするのも一案です。乾燥させない生の生姜を加える方法もありますが、手足までしっかり温めるには乾姜の方が効果が高いと言われます。

身近な食材を加えて紅茶のバリエーションを楽しむなら、乾燥させたミカンの皮(陳皮“ちんぴ”と呼ばれます)を加えたお茶もお勧めです。陳皮は胃の調子を整え、気の巡りをよくします。作り方も簡単で、ミカンの皮を細く切って2〜3日窓辺で干しておくとできあがります。陳皮の陳には古いという意味があり、陳皮は古ければ古いほどよいと言われます。初めてそう言われたときは、「どこまで信じていいのやら……古ければ古いなんて、食べるものなのに」と思いました。半信半疑だったので、古いものは使わず、作って数週間の陳皮でオレンジティーを入れてきましたが、期待するほどの香りが立ちません。こんなものなのかしらと思っていましたが、先日冷蔵庫の中で1年ほど経った陳皮で紅茶を入れてみました。すると、新しいもので入れるより、ずっと華やかなよい香りがしました。こうしたものを、冬の間は組み合わせながら、紅茶を楽しみ、体を温めるようにしています。

ココアやコーヒー

冬の暖かい飲み物というと、ココアを連想する人が多いのではないでしょうか。ホットチョコレート、ココア、といえば、冬のおいしい飲み物の代表格ですが、薬膳的に見ると、ココアそのものに体を温める作用はありません。むしろ、利尿作用や心臓の機能アップといった、体の調子を整える作用の方が大きいようです。疲れた、動悸がするといったとき、また、体がむくんでいるときにはココアが効果的です。黒砂糖と少量のお湯でよく練って、温めた牛乳を加えれば、多少は温め効果もありそうです。

日本人がよく飲むもうひとつの嗜好品と言えばコーヒーですが、こちらもココア同様体を冷やすことはないかわりに、温める効果もありません。コーヒーは神経に及ぼす作用が大きいため、眠いときに飲むと目が冷めることは、よく知られていますが、更年期を和らげる作用はこれと行って見当たりません。好きで飲むのであれば別ですが、温めその他の効果効能を期待することはできません。

どちらも、イメージ的には冬に飲むと温まりそうですが、体への作用はあまり期待できそうもありません。体に効かせることが目的ならば、冬の間は他の飲み物を中心にする方がよさそうです。


冬のお楽しみドリンク

お湯を注ぐだけのお茶ほど簡単ではないけれど、冬になると飲みたくなるもののひとつが葛(くず)湯です。とろっとした舌触りと、ほんのり甘い優しい味が、子どもの頃から大好きでした。薬膳を始めてから葛湯の葛と葛根湯の葛根は同じものだと知りました。体がゾクっとするときや冷え切って背中が固まったような感じがする時は、風邪予防もかねて、葛湯を飲んでいます。

葛根は読んで字のごとく葛の根です。体の表面が冷えることで起こる筋肉のこわばりや震えを緩和する効果があると言われ、中医学では古くから薬剤として使われてきました。体の表面のこわばりをとる効果が大きく、寒さで縮こまった体や肩こりなどに効くといわれます。ただし、効果を得ようと思ったら、葛湯に使うのは葛粉でなければ意味がありません。片栗粉でも似たようなとろりとした飲み物はできますが、それでは薬効は期待できないのです。
また、せっかく体の表面の冷えやこわばりが体内に入ってこないようにする効果があるのですから、甘みをつける素材も、体の冷えを呼ぶものは避けたいものです。お勧めは、白砂糖ではなく、黒砂糖です。

葛粉が手に入らないときは、インスタントの葛湯の素を使う手もあります。ただし、成分表を見て、葛粉が入っていることの確認は忘れずに。最近はバリエーションで抹茶味なども出ていますが、抹茶の冷やす力の強さを考えると、抹茶よりはゆずや小豆くらいの方が温め効果は大きいでしょう。

もうひとつの冬の飲みものは、初詣などの屋台でも売っている甘酒です。こちらは、滋養が高く、乾燥しがちな体内に潤いを与えつつ、体を温めてくれる効果があります。そのままでもおいしいと思いますが、豆乳、牛乳を入れたり生姜の絞り汁を加えるといった飲み方もあります。白砂糖が入っていると、カロリーもアップし、体も冷やしてしまうので、砂糖の入っていないものを確認して購入したり、自家製甘酒造りに挑戦してみるなどしてください。

1日に何度のなく飲む嗜好品。その種類や飲み方を変えることが体質改善につながっていけばいいなと思います。


[参考文献]
日本中医食養学会編『食物性味表』日本中医食養学会,2009年.
梁晨千鶴著『東方栄養新書』メディカルユーコン,2005年.

※ 執筆者紹介
佐光紀子(さこう・のりこ)
国際基督教大学卒業。中医薬膳指導員。翻訳をきっかけに、重曹、酢、クエン酸など自然素材を使った家事に目覚め、洗剤などを使わずに掃除をする「ナチュラルクリーニング」を執筆、提案。同時に薬や強い洗剤などに頼りすぎないナチュラルライフを模索する。その一環で只今薬膳勉強中。主な著書に『汚れ落とし大事典』『重曹大事典』(ともにブロンズ新社)。
ホームページURL:http://simple-kaji.com



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