親愛なるブリードさま

強制収容された日系二世とアメリカ人図書館司書の物語

親愛なるブリードさま

日系人が敵性外国人であった頃のヒューマン・ドキュメント

著者 ジョアンヌ・オッペンハイム
今村 亮
ジャンル 一般書 > 単行本 > 伝記
出版年月日 2008/06/01
ISBN 9784760133888
判型・ページ数 A5・408ページ
定価 本体3,200円+税
在庫 品切れ・重版未定

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太平洋戦争勃発後、アメリカ本土に住んでいた日系人の大半が強制的に立ち退かされ、強制収容所に入れられた。収容された日系人約12万人のうち、三分の二は、アメリカに生まれ育ち、アメリカ市民権のある二世だった。学校でアメリカ合衆国憲法や民主主義の理念を学び、自分たちを100%アメリカ人と信じていた若者や子どもたちが、日本人の祖先を持つというだけで罪人のように収容された。
 この時カリフォルニア州のサンディエゴから収容所に送られた子どもたちを支えたのが、サンディエゴ市立図書館の児童室担当司書、クララ・ブリードであった。熱心に図書館を利用していて親交を深めていた彼らのために、彼女は本と手紙を収容所に送り続けたばかりか、子どもたちのリクエストに応じてその都度必要なものや、キャンディ、クリスマスプレゼント、卒業パーティのドレスの材料など、実にさまざまな品物を送っていた。「親愛なるブリードさま」ではじまる子どもたちの手紙にはたいていお礼の言葉が書かれており、どの手紙にも彼女への感謝と信頼の念があふれている。故郷サンディエゴを遠く離れ、無人の荒野に有刺鉄線と監視塔に囲まれた収容所生活で、クララからの便りは外の世界とを結ぶ絆として、子どもたちの心の支えとなった。
 この実話を、当時の子どもたちの手紙と大人になった関係者へのインタビューを中心にまとめたのが本書である。
 残念ながらブリード自身が子どもたちへ宛てて書いた手紙は今のところ1通しか見つかっていないが、250通にもおよぶ子どもたちからの手紙を彼女は戦後も長らく大切に保存しておいた。「子どもたち」の数は十数名にのぼり、年齢も、字を書き始めたばかりの幼い子どもから、大学を休学中の若者までさまざまで、強制収容に対する受け止め方もそれぞれ異なる。 本書では、子どもたちの過去の声(当時の手紙)と現在の声(著者によるインタビュー)だけでなく、他にも多くの声(証言や作文など)を組み合わせて、当時の状況を重層的に描いている。
 用いられている資料の中でも特筆すべきが、1980年代に全米十都市で開かれた戦時市民転住収容査委員会の公聴会で、収容所に入れられていた人々が述べた証言である。過去を自分たちの胸のうちに封印し、戦後長らく口を閉ざしていた人々が、はじめて公の場で強制収容について語った貴重な証言で、長年胸の底に秘めていた彼らの本音、特に白人に対する劣等感や政府に対する怒り、心の傷が切々と語られており、胸を打つ。
 本書は2006年2月、アメリカでハリー・ポッターシリーズを出版しているスコラスティック社から出版されるや、同年春の首都ワシントンでの図書館会議において、優れた低学年向け図書に贈る「ショウ・ミー・ザ・ハート」児童部門の栄冠を得た。翌2007年には、全米社会科評議会(NCSS)が主催するカーター・G・ウッドスン賞を受賞、同時にニューヨーク市立図書館推薦書に選定された。
 2007年初頭には、カリフォルニア州市民自由権公教育プログラム(CCLPEP)から奨励金を得たサンディエゴ市立図書館が、著者オッペンハイム氏に同書の戯曲化を依頼した。同年9月、市の中心部にあるホートン・プラーザの劇場でアジア劇場グループ(監督アンディ・ロー)によって2週間にわたり連日公演され、好評を得た。
 また同じCCLPEPプログラムの一環として、本書に登場するテツ・ヒラサキやルイーズ・オガワの手紙を教材とした小学校社会科授業の補習テキストが出ている。

クララ・ブリード略歴
クララ・ブリードは、1906年アイオワ州に生まれました。牧師だった父の死後、母親はクララと姉のエレノアを連れて、親類のいるサンディエゴに移り住みます。ポモナ大学卒業後、オハイオ州ケース・ウェスタン・リザーブ大学で図書館学修士号を取得、1928年サンディエゴ市で最初の児童室担当司書として採用され、16年間児童室担当司書として働きました。1945年に病気のプレスター館長に代わって館長代理を務め、翌年には館長の職に就きます。その後25年にわたり図書館新館の建築や新しい分館の設置や図書館の組織の整備などに尽力し、1970年に退職しました。1983年にはサンディエゴ市立図書館百周年を記念して『ページをひもとく――サンディエゴ市立図書館史・1882-1982』を出版しています。1994年サンディエゴにて、88歳で他界しました。本書に描かれた戦時下の日系人への支援を彼女は生涯特別視することはなく、そのため積極的に語ることもありませんでした。

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