柏書房株式会社KASHIWA SHOBO

エスニック・ジャーナリズム

移民・日本人の闘いの軌跡を探る

定価
4,180円(本体 3,800円)
刊行
2003/09/01
ISBN
4760124128
判型
A5
ページ数
376
ジャンル
歴史・地理

内容・目次

内容

戦前にカナダへ渡った多くの日本人たちは、差別や排撃と闘うためにいかにエスニック・コミュニティーを形成し、理論武装のためのジャーナリズムを完成させたのか。移民受入問題を考える上でも重要な示唆を与えてくれる。


目次

序 エスニック・ジャーナリズム ――日系カナダ人、その言論の勝利


第1章 日系ランバージャックたちの団結

 ――IWW系機関紙群と『大陸日報』の役割

1.Union PressとEthnic Press

2.北緯49度線を南から北から

3.バンクーバー周辺の製材所群への日本人就労

晩市周辺の製材所への進出/日本的「ボッス」の起源と職業の確立/本材加工の川上・川下への日本人労働力配備の拡大

4.「ヘスティング・ソーミル」伝説の真相

5.「ボッス」門田勘太郎と鳥取県人

6.官有林からの日本人締め出し

7.日本人、労働運動の表舞台へ


第2章 不況下の『日刊民衆』

 ――1929年~1936年のキャンプ・ミル労働組合

1.日本人労働運動の成立とその言論

2.不況下のキャンプ’ミル労働組合

3.『日刊民衆』支局の役割・組合支部

4.「大陸日報』『日刊民衆』『加奈陀新聞』の鼎立

5.コミュニテイ定着の『日刊民衆』


第3章 1937年日中戦争時の『日刊民衆』

 ――キャンプ・ミル労働組合と会社町オーシャン・フォールズ

1.不況脱出後の日本町と『日刊民衆』

2.労働会議加入10周年の行事

3.初の日白人の統一組合結成へ向けて

4.会社町オーシャン・フォールズ/オーシャン・フォールズの労働問題


第4章 『日刊民衆』終刊事情

 ――日米開戦とリトルトウキョウの破壊

1.開戦ですべての日本語新聞、発行停止処分

2.労働運動を人種偏見と戦う回路に

3.混迷のリトルトウキョウ

4.日本人の扱いで白人労組内に対立

5.『日刊民衆』社ついに解体


第5章 The New Canadianの創刊とその晩香坡時代

一1938~1942

1.日系カナダ市民連盟の機関紙誕生

2.開戦でThe New Canadianだけ発行許さる

3.日本語のぺ一ジ出現で読者増大

4.バンクーバーでの最後の印刷


第6章 戦時・日系人強制移動と世論形成過程

1.The Sun紙、「投書」利用によって予備工作

2.投書による世論の誘導

3.日系人の強制移動キャンペーン

4.日系人問題・論点の議題設定

 日本人の道路建設への動員/日本人収容キャンプ

5.日系コミュニティ・結社の崩壊

6.カズローをめざして


第7章 戦時、カズローへの移転

 ――The Kootenaian 地元週刊紙の協力

1.Exodusの試練

2.初めての日本語とカズローの住民

3.劣悪な労働条件の道路キャンプ

4.カズローの週刊紙 The Kootenaian

5.日本語活字 軍の車両で搬入

6.1台のライノタイプを2社で使用

7.撞頭した二世による教育と自治

8.偏見の超越 小さな週刊新聞のたたかい


第8章 カズロー時代の終焉 ロッキー山麓の町を離れる

 ――1943.4~1945.7

1.カズロー時代のキャンペーンの目標

2.日本人難民の整然とした動員

3.「再移動」へ向けて

4.「選抜徴用」制の日本人への拡大

5.スタッフ、通信員、販売協力者の一群

6.広告収入で安定した新聞経営めざす

7.再びカズローでの根を抜いて


第9章 日本人「追放」論を醸成したカナダのジャーナリズム

 ―― The New Canadian、人種偏見と戦う

1.1944年の「再定住」キャンペーンの背景

2.「国家選抜徴用」制による労働力動員

3.「排斥」をめぐる勇み足報道

4.CCFの支援、日本「送還」阻止へ


第10章  The New Canadian の8月15日

 ――ウィニペグのユダヤ人街、地下印刷工場

1.日本の敗戦と新根拠地ウィニペグ

2.先住民と東欧移民の州マニトバ

3.ユダヤ人印刷工の支援

4.「東するの陽は熾なり渡り鳥」

5.二世兵士のキャンペーン

6.英文紙、 The New Canadian を情報源に


第11章 日系カナダ人言論「検閲」廃止後の世論分裂

 ――1945~1946、日系人「追放」問題

1.カナダ政府の私信・記事の事前検閲制廃止

2.急擡頭の日本人「追放」問題

3.CP(Canadian Press)通信社の影響

4.アイデンティティの崩壊、社会組織の解体過程

5.白人社会への回路=労働運動

6.日系人コミュニティの再編成と転換する世論


第12章 解体した日系社会集団の再組織化

 ――根拠地のさらなる移動、1946~1948

1.ほろ苦い結末、「日本送還」問題

2.新聞編集・技術にも世代の差

3.K.OyamaとT.Umezukiのタイアップ

4.広告も日本人読者の重要な情報源

5.根拠地ウイニペグからトロントヘ


第13章 エスニック・ジャーナリズムの定着

 ―― The New Canadian のトロント時代へ

1.メディア・リテラシー運動の土壌・エスニック・ジャーナリズム

2.トロントの複合的移民社会の町へ

3.スパダイナ街の移民コミュニテイ

4.新聞紙面への「オービチャリ」情報

5. The New Canadian の紙面の変化

6.エスニック・ジャーナリズムに市民権

7.コミュニティとともに、歩を続けよ


あとがき

索引